6月20日のアミノ千葉は、特別講師として伊東静夫先生のお話がありました。
2つの話題で、2時間たっぷりお話いただきました。
今日は、その1つ目「人はなぜ走るのか ~born to runを考える~」のメモです。
今日の結論;
人は鈍足になるように進化した
ヒトの走力は動物界では劣っている
ヒトの走る速度は遅い。チーターは120km/hで走る。一方、ヒトの最速スピードは40km/hに及ばない。
スタミナの目安となる最大酸素摂取量も、他の動物と比べると人は少ない。普通の人で50ml/kg/min。イヌは120、ウマは200もある。
1マイルレースを、サラブレッドは1分32秒で走るが、ヒトは3分43秒かかる。
身体能力が劣るヒトは「持久狩猟」で生きてきた
走るのが遅いヒトが、どうやって獲物を仕留めたか。それは「持久狩猟」。
「全速力の逃走を繰り返した獲物は、熱中症により動けなくなる。そこを仕留める」
チーターの全速力は、10数秒しか続かない。一方、ヒトはゆっくりなら数時間走ることが出来る。
現在の狩猟をGPSで測定したところ、クーズーを25.1km、3時間50分追走して仕留めている。
持久狩猟は、気温32~42度の環境で、17~35kmの距離を、2~7時間かけて、4~10km/hの速度で走って仕留める。成功確率は5/10 と、他の動物の狩りより高い。
持久狩猟の鍵は、暑さの中で長時間動けることと、獲物を追跡する能力である。
BBCが、現代の「持久狩猟」を撮影した動画が、これ。4分頃から5分にかけて、足跡を綿密に分析して追うヒトと、8時間程度追われて疲れてダウンする獲物が写っている。
持久狩猟で得られた能力
ヒトは、速度を上げても、体温の上昇が少ない。これは、全身に汗腺があり、汗をかいて放熱ができるから。これにより、長時間動ける能力を獲得した。
他の動物は、毛皮で体を覆っているため、放熱は口(肺)を経由して行うことしかできない。
また、獲物を追いかける時には、足あとを手がかりにして、獲物の逃走方向を把握する。ヒトの脳の発展は、足あとからの追跡能力の向上によるものと考えられる。
ホモ・サピエンスが生き残った理由
人類は色々な進化をしてきた。
人差し指と薬指の長さの比の研究があり、人差し指のほうが相対的に短い方が、胎生時に男性ホルモンの分泌が多かったという研究がある。人差し指のほうが短い方がクロカンの記録が良い、という相関もある。
ホモサピエンスと近いネアンデ ルタール人と比べると、ネアンデルタール人の方が男性ホルモンが多く、優れたランナーだった。しかし、ネアンデルタール人は絶滅した。
適度にゆっくり走ると、内因性大麻の分泌が多くなる(ランナーズハイ)。適度とは、研究では140bps程度。100bpsでも160bpsでも分泌は増えない。
持久力には、競技的持久力と基本的持久力がある。競技的持久力は一定の距離を早く走ることであり、基本的持久力は明確なゴールがない。
ゆっくり走る方が、ヒトに適している
ヒトは、狩猟を250万年前から続けてきた。農耕生活は1万年前から、そしてパソコン生活は40年しかない。「持久狩猟」が人間の本能であり、 「ゆっくり走る」のがヒトの本能である。