商品企画のシナリオ発想術 田中 央 著

| コメント(0) | トラックバック(0)

著者は、「写ルンです」などの製品コンセプトを作ってきた。本書では、シナリオにより商品イメージが明確になることを種々の具体例で示している。以下は、thikのバイアスがかかった要約。

  • 製品には機能性と情緒性がある。
  • シナリオベース(「モノ」作りではなく「コト」作り)の考え方は以下のとおり。
    1. 現状の課題を挙げる。例えば、ユーザの不満(フィルム装填が面倒、カメラを持たないといけない)、メーカの不安(新規格フィルムは作り続ける必要あり、現像所網の維持も必要)、メーカの不思議(高級デザインカメラは不振)など。
    2. それを技術的に、あるいは事業の仕組み的に解決する対処案を考える。フィルム内蔵でどこでも売っているなど。
    3. 製品のイメージを考える。製品のコンセプトイメージ(例:親近感)から同義語や常套句、比喩を使ってイメージを膨らませる。「身近な、しっくり」や「名刺入れ、ライター、キャラメル」など。
    4. リストアップしたイメージに、「モノ」を当てはめてみる。キャラメルに当てはめると、カラフルな紙パッケージのカメラが思いつく。
    5. 5W1Hなどで利用シーンを想定し、シナリオを考える。
  • シナリオ作成のポイント
    • 想定時期を明確にする
    • 客観的データだけではなく主張や願望を含める
    • 「モノ」の核のコンセプトと提供価値をしっかり把握する
    • 5W1Hなどでシーンを具体化する
    • 機能、操作、行為がわかりやすいようにする

本書に記載されているような「シナリオ」、あるいは「利用シーン」や「ユースケース」という考え方は、顧客への提供価値をまず考え、そしてそれを製品の仕様(機能的仕様と情緒的仕様)に落とし込む為のものである。即ち、「コト」が最初にあり、そこから「モノ」を導く。

一方、事業や製品の戦略立案に使われる「問題解決手法」は、現状への不満箇所(「モノ」)を特定し、その解決策を導く。両者は相容れないように見えたが、著者は「モノ」から「コト」に変形して、再度シナリオベースで「モノ」に落とし込む必要があると主張する。

確かに、「ここが使いにくい」と言う顧客の指摘の裏に隠れている「本当にしたいこと」を把握すれば、もっと良い解決手段があるだろう。例えば、「ノートPCのキーボードが小さくて打ちにくい」という課題に対し、素直に大きいキーボードを提供する改良案もあれば、「どんな使い方で『打ちにくい』と感じるのか」を調査した結果、音声入力機能を採用する解決方法もあるだろう。

「顧客は何をしたくて、その行為をしているのか?」を考える、即ち「シナリオ」を想像するのは、本質的な解決の近道であるというのが本書の主旨だろう。

商品企画のシナリオ発想術―モノ・コトづくりをデザインする
商品企画のシナリオ発想術―モノ・コトづくりをデザインする田中 央

岩波書店 2003-01
売り上げランキング : 216841

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
ヒットを生む商品企画七つ道具 はやわかり編
新規商品企画の成功学
ヒットを生む商品企画七つ道具 よくわかる編
ものづくりのヒント―商品開発のネタが身近にこんなにもある!
「ヒット!」商品開発バイブル

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://thik.jp/MT-5.2.8/mt-tb.cgi/850

コメントする

このブログ記事について

このページは、thikが2007年1月27日 01:34に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「Freemindとテキストファイルとのインタフェースツール:MMEditor」です。

次のブログ記事は「イタリア人の働き方 内田洋子,シルヴィオ・ピエールサンティ著」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。