著者は、「写ルンです」などの製品コンセプトを作ってきた。本書では、シナリオにより商品イメージが明確になることを種々の具体例で示している。以下は、thikのバイアスがかかった要約。
- 製品には機能性と情緒性がある。
- シナリオベース(「モノ」作りではなく「コト」作り)の考え方は以下のとおり。
- 現状の課題を挙げる。例えば、ユーザの不満(フィルム装填が面倒、カメラを持たないといけない)、メーカの不安(新規格フィルムは作り続ける必要あり、現像所網の維持も必要)、メーカの不思議(高級デザインカメラは不振)など。
- それを技術的に、あるいは事業の仕組み的に解決する対処案を考える。フィルム内蔵でどこでも売っているなど。
- 製品のイメージを考える。製品のコンセプトイメージ(例:親近感)から同義語や常套句、比喩を使ってイメージを膨らませる。「身近な、しっくり」や「名刺入れ、ライター、キャラメル」など。
- リストアップしたイメージに、「モノ」を当てはめてみる。キャラメルに当てはめると、カラフルな紙パッケージのカメラが思いつく。
- 5W1Hなどで利用シーンを想定し、シナリオを考える。
- シナリオ作成のポイント
- 想定時期を明確にする
- 客観的データだけではなく主張や願望を含める
- 「モノ」の核のコンセプトと提供価値をしっかり把握する
- 5W1Hなどでシーンを具体化する
- 機能、操作、行為がわかりやすいようにする
本書に記載されているような「シナリオ」、あるいは「利用シーン」や「ユースケース」という考え方は、顧客への提供価値をまず考え、そしてそれを製品の仕様(機能的仕様と情緒的仕様)に落とし込む為のものである。即ち、「コト」が最初にあり、そこから「モノ」を導く。
一方、事業や製品の戦略立案に使われる「問題解決手法」は、現状への不満箇所(「モノ」)を特定し、その解決策を導く。両者は相容れないように見えたが、著者は「モノ」から「コト」に変形して、再度シナリオベースで「モノ」に落とし込む必要があると主張する。
確かに、「ここが使いにくい」と言う顧客の指摘の裏に隠れている「本当にしたいこと」を把握すれば、もっと良い解決手段があるだろう。例えば、「ノートPCのキーボードが小さくて打ちにくい」という課題に対し、素直に大きいキーボードを提供する改良案もあれば、「どんな使い方で『打ちにくい』と感じるのか」を調査した結果、音声入力機能を採用する解決方法もあるだろう。
「顧客は何をしたくて、その行為をしているのか?」を考える、即ち「シナリオ」を想像するのは、本質的な解決の近道であるというのが本書の主旨だろう。
商品企画のシナリオ発想術―モノ・コトづくりをデザインする 田中 央
岩波書店 2003-01
売り上げランキング : 216841
Amazonで詳しく見るby G-Tools
関連商品
ヒットを生む商品企画七つ道具 はやわかり編
新規商品企画の成功学
ヒットを生む商品企画七つ道具 よくわかる編
ものづくりのヒント―商品開発のネタが身近にこんなにもある!
「ヒット!」商品開発バイブル
コメントする