13のイノベーションを通して、それらに共通する考えを導く。各ケースに対して、物語編と解釈編からなる。物語編はジャーナリストの勝美氏が担当、NHKの「プロジェクトX」そのもの。解釈編は、野中教授が担当している。
野中教授の主張の一部:
「イノベーションを起こすのは『人』である」から、その力を最大限に生かす「知識経営」が必要である。弁証法の考えに基づいて、異なる考えを昇華し、綜合することによりwin-winとなるベストな解が生まれる。
日本人が、日本人を良く知って書いたイノベーションの本だと思う。
「分析ばかりして、主体性がない」という著者の主張は、納得する点もある。「だったら、やってみろよ」って言い返したくなることもある。
でも、なぜ分析に長け、主張することが弱くなったか。2つの要因があるのではないか。
1つは、「主張が不要であった」から。持続的イノベーションでは、過去を延長したイノベーションである。この場合、過去の(既存の)顧客、製品、他社を精緻に分析すると、不満点や不足点が見える。それの解決が次のイノベーションであるから、主張は不要である。オイルショック以降の日本が得意とした持続的イノベーションで染み付いた文化・体質では、主張ではなく、分析が重要視された。
もう1つは、「米国輸入の分析の訓練をした」から。米国の教育は、主張の教育である(と、thikは認識している)。自己主張が強い米国人は、それを補完する客観的分析が必要になる。そのため、米国の事業企画手法は、問題解決でも「分析」に重点を置く。なぜなら、主張は自然に盛り込まれているから。一方、唯一の正解を求めようとする教育を行ってきた日本では、現状(前提)をよく「分析」し、そこから1つの答えを見つける習慣が身についた。このようなバックグラウンドに、米国輸入の「分析重視の事業企画」を適用すると、何を主張したいか(so what)がおろそかになるのではないか。
狩猟民族の「相手を負かすか、負かされるか」と、農耕民族の「みんなで育てましょう」との違い、かも。
(すごくステレオタイプな論理の展開ですね)。
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