著者は、外務省他でインテリジェンス=情報分析に従事した方。なので、実例もフィクションではあるが生々しい。
以下、気づいた点から。
- 分析は、アート(直観、演繹的)と、サイエンス(手順、帰納的)の両方が必要
- ベースレートの誤信:異なる集団に対する確率に注意。例えば、a.40歳台の女性の1%が乳がんにかかっている、b.マンモグラフィ検査は、乳がんの人の80%が陽性となり、乳がんではない人の9.6%が陽性(擬陽性)となる、c.Aさんは、マンモグラフィで陽性だった。 このとき、Aさんがほぼ乳がんと判定してしまうのが「ベースレートの誤信」。実際にはベイズ理論により7.8%の確率で乳がんとなる(乳がんではない可能性のほうが高い)。
- 競合仮説分析(ACH,Analysis of competing hypotheses)により、サイエンスで仮説を追い込むことができる。競合仮説分析は、想定した複数の仮説に対して、事実(情報)と合致するかどうかを見極め、合致しない情報が少ない仮説を仮説候補とする。複数の仮説候補から1つを選択するのは「アート」である。
実例が戦争であったり、事件であったりと、ビジネスの世界からは遠いものばかりではあるが、考え方は応用が利くだろう。「情報分析者は、その主観に偏りが出ることを避けるため、分析対象国への訪問はあまり行わない(百聞は一見より勝る)」など、普通の概念と少し違うのも新鮮だ。
前半がやや冗長なのが残念だが、情報を分析する手法を垣間見ることができる面白い本である。
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北岡 元 おすすめ平均 裁判員制度に役立つ (?!) 情報分析法 具体的、かつ丁寧 競合仮説分析のケーススタディ 一見が百聞に如かない? Amazonで詳しく見るby G-Tools |
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