ボストンコンサルティンググループ(BCG)のVPである著者が、1998年に執筆した本。
当時は先進的だった(そして、腑に落ちていなかったも知れない)「デコンストラクション」という考え方も、今では問題なく受け入れられる。だからこそ、「デコンストラクション」の考え方を十分理解して、現在検討している業界のプレーヤを整理しようと思って読んだ。
以下、本書及びthikの考えから。
- 「デコンストラクション」とは、従来の事業の定義とルールがまったく変わってしまい、一体化して提供することで生み出していた価値が、個別に提供しても意味をもつようになったこと。
- 「デコンストラクション」以前は、バリューチェーンの全体を提供している企業同士が競合していた。
- 「デコンストラクション」が発生すると、「レイヤーマスター」「オーケストレーター」「マーケットメーカー」「パーソナルエージェント」という形態の価値の提供の仕方が可能となった。
- 「レイヤーマスター」は、業界各社のバリューチェーンの一部を独占する形態。
- 「オーケストレーター」は、バリューチェーン全体を統括するが、各要素は他社に委託こともありうるモデル。デルコンピューターなどが例である。
- 「マーケットメーカー」は、デコンストラクションにより細分化された価値提供者の間をつなぐモデル。自動車オークションなど。
- 「パーソナルエージェント」は、価値提供者の増加に伴って、顧客要望を踏まえて適切な価値提供者を選定する代行者。検索エンジンやAmazonなど。
- デコンストラクションの発生を予測するためには、事業の定義を見直してみると良い。たとえば、「百科事典は耐久財と考えていたが、毎年買い換える消費財だ」(ブリタニカの例)など。
- デコンストラクションの発火点を知るには、「ネットワーク化」により、バリューチェーンのどこの価値が増加・減少するかを考えるとよい。
- デコンストラクション自体の経営者の役割は、a.ビジョンを持つ、b.リスクをとる、c.人を生かす、である。
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やや総花的ながら、起こっていることの分析だけではなく、それに対しての対処策まで踏み込んで書いてあるのには好感が持てた。コンサルファームに所属する方が執筆すると、ややもするとコンサルするための糸口としての本になり勝ちだが、本書の読者は、まずは自分で処方箋が作れるようになると思う。
文字も大きいし、200ページ強という適切な分量で、読みやすい本でした。
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