「事業立ち上げに必要なもの、それは戦略」。あたりまえなのですが、具体論を見せられるととっても納得します。以下、先週エントリした、「新規事業の哲学(棚橋康郎著)」から。この本、気に入りました。
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著者がEI(エレクトロニクス情報通信)事業部に赴任した当時(1995年)は、以下の状況だったという。
- 事業特性:EIは人材がすべてであり、これはオフバランス(資産として明示されない)である。
- 人:製鉄の場で鍛えられた、問題から逃げない優秀な優秀なエンジニアリング集団がいる。また、研究所は実務で役立つR&Dを推進し、学位取得や論文発表をご法度とする珍しい研究所だった。
- オペレーション:ビジネス戦略と事業部のマネジメントが未確立。また、スケジュール管理は個人に依存。
このような状況で、安易に下請けに走ることなく(=明確な戦略)、自らのポテンシャルを信じて銀行のキラーアプリケーションを受注させた。これは、製鉄システムのオープン化をにらみ、進めてきたオブジェクト指向の研究開発を、日本で初めて金融に適用させたものである。
この成功により、オブジェクト指向を日本に浸透させたい米国新興企業(サン、オラクル、ベリタスなど)と提携ができ、オープンシステムのオブジェクト指向技術のノウハウ蓄積がさらに進んだ。正のスパイラルに入ることができた。
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著者の棚橋氏は、上のように述べる。一言で要約すると、
明確な戦略によりモチベーションを向上させ、優秀な技術者の能力を最大限に生かした
ということだろう。自分の知恵(スキル)が商売道具になる知識社会では、モチベーションを高めることの重要性は今更言うまでもないが、そのモチベーションを向上させるのは戦略であることが実感できた。そして、その戦略は、技術者のプライドや知的好奇心を満足させるものである必要がある。「自分のやりたいこと」が収益につながる場合に、会社も本人もハッピーになるということだ。
新規事業の哲学 成功へのマネジメント | |
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