特許法による技術の独占と、独占禁止法による市場の独占の禁止

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特許は、発明の考案者にのみ権利行使の許可を与える。すなわち、その発明については、実施権を独占できる。
一方、不当廉売など、一般的に妥当と考えられない方法で市場を独占することは、独占禁止法で禁止されている。

NIKKEI NETに、以下のような記事があった。

福岡市や名古屋市発注の下水道用マンホールの鉄ぶたを巡り、競合他社の価格や販売数量を不当に制限し、事実上、市場を支配した疑いが持たれている。
 両市は鉄ぶたについて、増水時にふたが外れにくくするなど同社が特許を所有する構造や機能を指定しており、競合他社が両市に納入するには、特許使用の許諾を受けなければならないのが実情。同社は計20数社の競合他社と特許使用の許諾契約を結ぶにあたり、その条件として販売価格などを制限したとみられる。

特許の実施を他社に許諾するかどうかについては、特許保有者の事業判断であり、独占禁止法とは関連がない。論点は、以下の2つだろう。

  1. その特許が必須であるように発注者に働きかけたかどうか。
  2. (仮に働きかけがあったとして、)その行為と他社への実施を許諾しない行為の合わせ技で独占禁止法に触れるかどうか。

当然、自社優位性をアピールして販売活動は行うはずなので、論点1のみで独占禁止法違反に問われてしまうと、特許という発明独占権の意味が無くなる。
(もちろん、国際標準のように、「相応な対価で差別無く実施許諾する」ことを前提としている場合は別)。
また、如何に合理的に差別化して(もしくは他社を排除をして)自社の市場シェアを最大にするかを考えるはずであり、また、顧客側の要望を縛っているわけではない(顧客に仕様決定の選択権を与えている)ので、論点2でも問題は無いのではないかと思う。
更に、その特許が有用な効果をもたらしているのであれば、他社は別手段で同様あるいはそれ以上の効果を実現するように努力するはずであり、「特許を他社に許諾しないから独占禁止法違反」というのは短絡過ぎるのではと思う。

本件は、特許保有者が公正取引委員会と争う姿勢を見せている。裁判を通じて発明の重要さを認識してもらう機会になるのではと思う。

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このページは、thikが2005年12月15日 00:58に書いたブログ記事です。

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