明日は誰のものか 第1章のエントリの続き。
第2章「競争のための戦い-競争相手の実力を見きわめる方法」では、クレイテンセンの「RPV理論(Resource,Process,Value)」に基づき、相手の実力を見きわめ、戦いの結末を予測する。
企業は、RPVに従って行動する。その為、他企業のRPVを知れば、彼らの行動がわかり、ある領域での実力がわかる。
(差異が無いときには、別記の書が指摘する項目で戦いの結末が決まる)
- Resourceを知るためには、有形資産(技術、設備など)と無形資産(人的スキル、ブランドなど)を知る。いずれも公開情報から類推可能だ。
- Processは、事業の進め方(how to, skill)に現れる。これを知るためには、企業がどのように課題に対処してきたかを見ればよい。(thik注:今まで、事業活動(ビジネスプロセス、バリューチェーン)のどこに重点を置いてきたか、ということか)
- Valueは、事業を進める意欲(モチベーション)に現れる。売上構成、コスト構造、規模、重要顧客、投資履歴などが参考になる。
(差異が無いときには、別記の書が指摘する項目で戦いの結末が決まる)
- step1 ローエンド破壊による参入。既存企業が興味が無い領域に新規参入する。「興味がない」理由は、自社RPVに適さない(市場が小さい等)から。既存企業がローエンド破壊の鍵となるイノベーションの重要性に気づいても、それを自社市場(=ハイエンド市場)に適用しようとして中途半端になる(イノベーション自体が未熟であり、ローエンド市場には最適だがハイエンドには耐えられないため)。
- step2 既存企業のハイエンドへの特化(逃避)。高利益をもたらし、参入企業が実現できないハイエンドへ逃避する。
- step3 参入企業が得意とするビジネスモデルを基にしたメインストリーム市場での戦い。既存企業が従来のモデルでハイエンドへ特化する間、参入企業はローエンド破壊を実現したモデルでハイエンドに昇りつつある。ハイエンド市場の規模×利潤が飽和し始めると、既存企業はメインストリーム市場に戻らざるを得ない。ここでの戦いは、参入企業に利がある。
- 市場規模が(今は)小さい、ローエンドの(overshotした)顧客、別の収益源(既存企業が高利益を狙うのに対し、新規企業は回転率で勝負する等)。
- 既存企業の業務プロセスに合わない業務プロセスの導入。
- step2で、既存企業がハイエンド市場に特化しない場合。ハイエンド市場が存在しない、あるいはハイエンド市場だけではうまみが無い場合などに発生しうる。
- 参入企業のビジネスモデルが、既存企業と似ている場合。step3で既存企業に勝ち目がある。
- 1.市場を明渡す(上のシナリオどおり)。
- 2.参入企業の顧客を攻める。該顧客は重要だというメッセージを発し、自社製品をリメークして攻め込む。
- 3.参入企業が、それ以上に自社顧客を侵略しないようにする。自社顧客向けにローエンド製品を出す。
- 業界各社のビジネスモデルはどんなものか。その意欲はどんなものか。そしてそのスキルとはどのようなものか。
- 業界各社はお互いにどんな比較をしているのか。マーケットの要求とはどのような対比をしているのか。均等が認められるのはどこか。不均等が認められるところはどこか。
- 不均等が有利に傾くのは攻め手の側か、それとも既存企業の側か。
- イノベーションは無理なくその狙ったマーケットにうまく当てはまるのか。押し込んでいるという証拠はあるか。
- ある企業がローエンドのマーケットを明け渡し、上のマーケットに移行しようとしている兆候が見られるか。移行の目標になる「上」が存在しているのか。移行にはどれはどの時間がかかるか。
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本章では、著者が従来から提唱していたRPV理論に基づいた行動の兆候を具体的に述べ、既存企業からみたローエンド破壊による敗戦を避けるための方法を記している。
画期的な新理論は述べていない。従来の理論をより具体的に判りやすく述べると共に、実践する時のtips的な面を強調している。
どなたかが記していたが、クリステンセン理論はおおむね大企業向けである。著者が大企業からコンサルフィーをもらって研究した成果だからかもしれない。勿論、著者の主張を逆にすると、窮鼠猫をかむ戦略となる。
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