PHP新書で780円。読み応えはたっぷりあった。
収入や職位向上を目的としたキャリアアップのHow To本ではなく、キャリアアップの必要性と考え方を記した本。
もったいぶった書き方でなく、著者の主張が明確であり判りやすい。私がイメージする学者先生らしくなく、「じっくり考えて、後は臨機応変に」という主張も個人的にはツボ。前半は導入としてエクササイズを多用し、内省できるのも良い(後半はちょっと息切れ?)。ただ、途中のRJP(realistic job preview)と「白い嘘」(欠点を意図的に触れない)は、キャリアデザイン論からそれているようにも思えた。
読後の感想は、「キャリアデザインも、ビジネスデザインも同じ」だった。
著者のキャリアデザインに対するキーワードは、「デザインとドリフト」。ある契機に強くキャリアを考え(デザイン)、その後は周囲の影響から影響される(ドリフト)というものだ。
ビジネスにはPDCAサイクルがある。「計画(Plan)」→「実行(Do)」→「結果を確認(Check)」→「必要な対策実施(Action)」である。実行(Do) といっても、計画時に行動が100%
決まっている訳ではなく、飛び込みの営業をしたり、旧来の友人と飲みながらお客さんを紹介されたりすることもある。ビジネスの世界では、「デザイン」と「ドリフト」をうまく組み合わせているのだ。
著者も記しているように、「デザイン」と「ドリフト」は対立概念のようで、実際には両立する。いや、双方が無いと、キャリア(人生、と言ってもいいだろう)は充実しないだろう。ただ、常に自分の描いたデザインを意識しながら、偶然の良いチャンスを掴み取っていこうという心がけが必要だと思う。
著者は、いいキャリアをいくつか例示している。