証券アナリストのHewitt Heiserman Jr.の「It's Earnings That Count: Finding Stocks with Earnings Power for Long-term Profits」の和訳。
(毎回思うのだが、なぜ邦題をつけるときに曲解してしまうのだろう?)
企業が公開している損益計算書は、企業の実態が正しく把握できない。著者は、「防衛的(Defensive)損益計算書」と「積極的(Enterprising)損益計算書」およびそれらから計算される一株あたりの利益をプロットした「利益力チャート」で企業を判断すべき、と言う。
防衛的損益計算書を作る目的は、企業が内部金融可能かどうか(自社で資金調達可能か)を判断するためである。通常の損益計算書に2つの補正を行う。ひとつは、通常は複数年度で償却している固定資産を、単年度で償却させる。もう一つは、運転資本への投資の考慮である。キャッシュフロー表に近い考えである。
一方、積極的損益計算書の目的は、企業が価値を生み出しているかの判断材料である。こちらも、通常の損益計算書に2点の補正を行う。一つは無形資産(広告宣伝、研究開発)などを単年度で処理せずに複数年償却する(資産化する)。これら資産は、将来にわたり企業価値の向上に貢献する。そのため、単年度での処理ではなく、(有形)固定資産と同様の処理を行う。もう一つは、株主資本をコストとして考え、利息を支払うこととする。
そして、これら2種の損益計算書から算出される一株あたり利益(EPS)を二次元にプロットしたものが「利益力チャート」である。そして、「自社でキャッシュが回り(=防衛的損益計算書でEPSが正)、かつ価値を生み出している(=積極的損益計算書でEPSが正)」企業が優秀な企業と位置づけている。
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キャッシュフロー表で月単位のキャッシュ予測を行うことはよく行われている。これは、いわゆる黒字倒産を避けるための見積もり、すなわち「最悪でもつぶれない」という防衛的な見方である。
一方、会社(または事業)への投資価値があるかどうかは、例えば将来の価値と資本コストから推定する方法がある。が、本書は、将来の価値を見積もるときは、通常のキャッシュフローではなく、経費を資産とみなすことが必要では、と提案している。
本書は主に株式投資家に向けて書かれたのだろうが、事業計画の検討時にも頭の片隅にあると面白いプランができるかもしれない。
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