戦略コンサルファームのベインアンドカンパニーの著者が、コア事業を再構築させるための手法を説いている。原題は「Unstoppable: Finding Hidden Assets To Renew the Core and Fuel Profitable Growth」。趣旨は副題のとおり、「隠れた資産で事業改革する」というものだ。
和訳はベインの日本チームが担当している。山本真司さんの名前がクレジットされているが、彼は以前読んだ「40歳からの仕事術」を著したときはATカーニーのVPだった。コンサル業界は人材流動性が高い。
以下、気付いた点のメモ。
- 企業を成長させるにはコア事業を進化させる必要があるが、コア事業を「継続しながら」コア事業を根本的に変える必要がある。
- ダメなのは、コア事業の深堀をせずに、
- 次世代の急成長市場の激戦に参入
- 運を頼りに大化けしそうな技術を買う
- 大規模な事業転換を目的とした大型買収
- 無策
- 隠れた資産(Hidden Asset)が成長の鍵である。隠れた資産には3種類ある。
- 隠れた資産1:事業基盤。ノンコア事業、孤立した製品、未開拓の周辺事業、コアをサポートする昨日などが該当する。
- 隠れた資産2:顧客インサイト。活用されていない顧客データ、特別なアクセスルートや信頼、隠れた顧客セグメントなどが該当する。
- 隠れた資産3:ケイパビリティ(能力)。本社や各事業のノンコア、またコアだが活用されていない能力が該当する。
- コア事業を再定義する時は、以下。
- プロフィットプール(Valuechain上の儲け)が移動している
- 破壊的技術や新しい競走モデルが出現した
- 成長法則の失速や差別化要因の縮小
- コア事業を再定義するのは、以下の4つが必要。
- 再定義はコア顧客から始める
- 隠れた資産は、a.差別化可能、b.顧客に価値を提供できる、c.プロフィットプールが存在する、d.実行に必要なケイパビリティが獲得できる、の条件を満たす。
- 隠れた資産に気付くには、新たな視点が必要
- 組織の再定義が必要
最後には、ベインの日本支社の独自考察として、コア事業の進化に成功した三井不動産とスルガ銀行のケースが紹介されている。和訳本のみのサービスらしい。
コンサルをなりわいとする人が書いた本らしく、豊富な実例に基づいていて納得性が高い。結論には新味は無いが、実際に事業の再構築に成功するためには、奇抜な種や仕掛けは不要で、地道な事業(企業)変革が必要なのだろう。
なお、冒頭にもあるが、本書は企業変革の戦略を述べている。具体策は、ケースバイケースということで、コンサルしましょう、ということだろう。
本書には、先人の研究ということで以下の4つの本が紹介されていた。いずれも一読に値すると思う。
- ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則
- 伸びない市場で稼ぐ!成熟市場の2ケタ成長戦略 (以前の感想はこちら)
- コア・コンピタンス経営―未来への競争戦略
- ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する (以前の書評は、こちらや、こちらや、こちら。ブルーオーシャン戦略は、少し斜に構えて読んでいました)
コア事業進化論―成長が終わらない企業の条件 山本 真司 牧岡 宏
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