第一部はCFOが必要とされてきた時代背景を述べ、第二部ではスーパーCFOとして10人(10社)の業績に触れる。第三部では日本企業再生に必要な財務的観点について述べる。
企業価値を評価する際には種々の会計指標が用いられる事が多い。そのため、財務的観点から企業価値を向上させることに責任を持つCFOの役割が急激に重要になってきてた。CFOの職能は広く、資本構成管理・コスト管理・パフォーマンス測定・予算配分・経営計画作成などの伝統的な機能から、IR,情報管理、リスク管理、M&A等に広がってきている。
CFOの原点は、事業部制を取り入れたデュポンに見られる。事業部門と本社部門を分割し、コントローラー(会計、出納、原価分析)とトレジャラー(証券、税務、福利厚生、統計)を司る財務スタッフの頂点がCFOだ。また、日産のゴーンを支えたのも優秀なCFOであるムロンゲ氏である。日産の財務状況の分析を元に、改善すべき最重要課題を見つけて対策を実施し、対策実施済状況を維持するためにシステム化を図った。
日本は「GNPの増加」というマクロ的な資本主義の面から判断すると世界でも素晴らしい結果を残しているが、各企業の収益性などのミクロ資本主義の面では劣る。マクロ(国家)が強ければ成長し得たのは、「日本株式会社」が海外に広大な市場を持ちミクロを犠牲にしてシェア拡大を図ってきたからである。他の原価が低い国が同様の手法で展開を始めた場合、個別に成長するミクロ資本主義に移行せざるを得ない。
今後、日本はマクロ資本主義の強さで蓄えた「ストック」を優位性とし、従来のフロー重視のマネジメントを変更することで成長することができるだろう。例えば、年間の事業収益というフローではなく、資産運用というストックに重きを置くことにより、新たな成長ができる。
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本書は、CFOを大変広い意味で捉えていると感じた。すなわち、本書で書かれている「CFOの仕事」は、一口で言うと財務面から見た「事業戦略立案、実行」であるからだ。CFOというと、資金繰りや、税務対策や為替ヘッジなど、いわゆる「営業外収入」と経費節減が主と考えていたがどうやら違うらしい。事業成長のための財務面でのサポートが、CFOの大きな仕事だ。さらに、日産のムロンゲ氏の例では、CIOやCOO的なことも手がけていると感心した。
第三部では、日本の企業再生への教訓と題しているが、第一、二部から論点が飛躍しているような気がする。本を分けても良かったのではないかと思う。
最強CFO列伝 ― 巨大企業を操るもう一人の最高権力者たち | |
井手 正介 おすすめ平均 読み物としては面白いが 続編が読みたい。 伝記としては及第点だが、自説の展開は余計 ムロンゲ氏の本が読みたくなる 具材は最高、料理人は拝金妄想な、埒外の一冊。 Amazonで詳しく見るby G-Tools |
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