前半では、日本企業の低収益の原因が「戦略がない」ことに拠ることを各種データを使って説明している。例えば、米国企業と比べると以下の傾向がある。
- 日本企業は、好況時は流れに任せて無策、不況時は課題を先送りして無策。そのため、全般的に低収益となる「慢性低収益症状」。
- 米国企業は突飛な戦略により一時的に低収益に陥ることもある「急性低収益症状」。
後半では、日本企業のヒトの状況に触れつつ、「ではどうするか」を簡単に示している。
- 事業の責任を負うがゆえに戦略を担うべき事業部長が、「管理職」になっていて「経営職」ではない。事業部長職の任期の短さ(平均2年弱)や、将来の検討ではなく過去の反省から来る運営を行う為だろう。
- 日本は、現場からたたき上げた最強の職能部長(=管理職)を作るシステムには長けている。しかし、経営職を作るシステムは皆無だ。
- (参考) 経営職は長期収益の上限を定め、管理職は収益の下限を管理する。経営職は明日に立ち向かい、管理職は今日を保証する。
- 米国型のMBAスクールは経営職を育てるには最強だが、副作用(エリート意識、現場無視)も強い。
では、日本に向いた経営職の育成手法は何か? その答えが著者が属する大学院の宣伝に読めてしまい、若干違和感を感じた。
また、非常に多くのデータ著者の仮説を裏付けているが、文章はやや冗長である。サマリがあれば、なお良い。
なお、本書で使用しているデータは、電機業界・精密機器業界の実際の値(P/L,社長就任期間等)である。メーカ、特に前述の業界に属する人は、結論はどうであれ一読する価値はあるだろう。
戦略不全の論理―慢性的な低収益の病からどう抜け出すか | |
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