アマゾンのロングテールは、二度笑う 鈴木貴博著

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副題は、「『50年勝ち残る会社』をつくる8つの戦略」。題名にあるアマゾンの話は、8つの戦略の1つである。副題の方が内容に即しているが、キャッチーなタイトルとして表題を選んだのだろう。

本書の最も伝えたいメッセージは、「自分の有利な土俵で戦う。あわよくば、戦わない。そして、土俵の選び方が、最重要な戦略である。土俵を決めたら、徹底的に集中する」という点である。

著者が前書きで書かれているように、「休日にさらりと読める戦略本」である。そして、章題に象徴されるように、身近な具体例で判りやすく戦略を解説している。

以下、一部引用&要約。

  • 戦略論の視点で見れば、(現場による)工夫が「一番怖いこと」(略)工夫が悪いのではないが、工夫に満足することによって土俵が悪くなっていることへの対策が後手に回ってしまう。頭の良いビジネスマンは、どんどん「今ある(悪い)土俵での工夫」に専念して、結果として会社を凋落させていってしまう。
  • 業界トップにとって、(差異化ではなく)同質化こそが重要な戦略となる。トップ企業は、「商品開発力」と「販売力」で同質化を仕掛ける。コカコーラの自動販売機(販売力)、トヨタの商品開発力などが代表的。但し、デジタル製品は誰が作っても品質が同じのため、中国などのコスト構造が全く違う相手に対しての同質化戦略は効果が薄い。そのためトップ企業とは言えども「製品以外での差異化」で戦う必要がある。そのため、この土俵で有利に戦えるのか、そのためにはどうするかを考える必要がある。
  • オンリーワンビジネスを構築できれば強い。競合は敵と見なさない可能性もあり、一人勝ち可能。そのためには、従来の事業に顧客ニーズを素直に「足し」、不必要なものは「引く」。これを新規事業として始めようとした場合の大きな障壁は「身内」。自社内の業界常識が足枷になる場合が多い。そのため、事業の経験はあるが業界の素人で立ち上げ、社内のゴッドファーザーを作っておく必要がある
  • アマゾンは、配達無料、興味を持ちそうな本のアドバイスなど「使いやすい」という点(これをWeb1.0の効果)で一度笑い、自社の売上の1/3が他社が追随できないロングテールに因るものである点(Web2.0の効果)で二度笑う
  • PCの不完全戦略(常に不良があるが、それより新機能の魅力が勝るために売れる)に対して、品質重視の日本の製造文化が適応できなかった。このような「ベストエフォート型」事業は今後増える。それへの対策はEUに見られる「疎結合」である。即ち、自社で全て抱えず、また他社とも「密」にはつながらない、という点である。

他にも、日本で総中流階級が崩れつつある今、上流・下流階級で成功する方法に触れたり、中国で成功する鍵を述べたりと具体論も一部ある。

どうやって有利な市場を探すか、という点についてはあまり記述はないが、不利な市場で真面目に戦うことの空しさについてはとてもよくわかるし、日本が構造的にそれが得意だったのも理解できた。だが、それでは先がない。本書を踏まえて、「自分ならどうするか」を考えて、そして行動しながらその考えを修正していく必要があるのだろう。

最後に、本文から引用。

考えていただきたいのは、「自分が50代になって、この会社の経営陣に加わったとき、どういう会社になっていてほしいか」ということです。もしあなたが、40代のうちに10年かけて足場をより戦いやすい土俵に移しておけば、50代になったとき、幸せなビジネスパーソンとしての毎日が待っているはずです。そして、そういう考え方をすることこそ、戦略的なものの見方なのです。


アマゾンのロングテールは、二度笑う 「50年勝ち組企業」をつくる8つの戦略 (講談社BIZ)
アマゾンのロングテールは、二度笑う  「50年勝ち組企業」をつくる8つの戦略 (講談社BIZ)鈴木 貴博


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このページは、thikが2007年8月28日 08:02に書いたブログ記事です。

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