成果責任は誰にある?

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原題はLevels of Excellence。本書は、Levelすなわち職務階層と、7Sモデルの2つがメインテーマである。そして、邦題の「成果責任(accountability)」は、「責任(responsibility)」との対比で述べられている。

日本では、Strategy,Structure,Systemを「ハードの3S」、Shared Value(本書ではSuperordinate goals),Style, Skills, Staffを「ソフトの4S」と分類して、「ハードの3Sから手をつけて、ソフトの4Sで定着化を図る」と言われる場合が多い(参照:グロービス MBA用語集)。だが、本書では、

オリエンター
上位目標(Superordinate goals)、戦略(Strategy)

エネイブラー
組織構造(Structure)、システム、スキル

エナジャイザー
スタイル、スタッフ

と分類している。そして、
オリエンター
目標を明確に規定するもの

エネイブラー
目標を達成するためのチャンネル(仕組み)

エナジャイザー
目標達成のためのモーター

であり、それらが相互に連関している(どれが先、どれが後と言うことではない)と述べている。

Levelは、エリオット・ジェイクスが提唱している組織階層論である。組織に必要な階層数と、それぞれの階層が担うべき役割と、そのタイムフレームおよびオーストラリアでの各レベルの平均給与が述べられている。階層の数および階層種類(職務)は多すぎても少なすぎても機能不全であり、適切な人を適切な箇所に配置する必要がある。

そして、成果責任は階層のトップのみが負うように規定されているが(フォーマルシステム)、実際に成果を達成するにはチーム協力が欠かせない(インフォーマルシステム)。そのため、フォーマルシステムとインフォーマルシステムの一体化が必要である。その鍵は、「組織の行動について成果責任をチームメンバ求める」ことである。

*******

「責任(responsibility)」と「成果責任(Accountablity)」の違いは、日本語では非常に表しにくい。本書では、responsibilityは倫理的な、道義的な責任の意味で使っており、ビジネス面での明確な「責任」(降格、解雇など)は無いとしている。それに対して、accountabilityは、給与=契約の対価としての責任であり、未達成であれば解雇などがあり得るとしている。


本書は小説仕立てになっており、非常に読みやすい。
一部、著者のノンフィクションが入っていたり(リオ・ティントの説明によると、本書のに出てくるCEOやコンサルタントが勤務していたオーストラリアの鉱山に勤めていたらしい)、最後がラブロマンスになったりと、普通のビジネス書にはないおもしろさがある。
また、オーストラリアにおける各レベルでの給与格差は日本とは全く異なることに驚きを覚えた。レベルごとに念頭におくべき最長のタイムフレームと共に記す。

  1. レベル1 オペレーター:5万ドル 0?3ヶ月
  2. レベル2 現場のマネージャー(課長):9万ドル 3?12ヶ月
  3. レベル3 部門のマネージャー(部長):14万ドル 1?2年
  4. レベル4 統括マネージャー(本部長):25万ドル 2?5年
  5. レベル5 マネージング・ディレクター(取締役[執行役員]):50万ドル 5?10年

金額の差もあることながら、タイムフレームという概念は新鮮だ。3年程度の中期計画を考えるのはレベル4であり、長期計画はレベル5となる。そして、単年度のオペレーションがレベル2、その計画がレベル3というところか。

私の周りを見回してみると、給与のみならずタイムフレームの考え方のギャップも大きいことがわかる。逆に言えば、「成果責任」が不明確で「責任」しかない環境で仕事をしているのかもしれない。

なお、7Sモデルは、ITCの知恵袋e-business用語集を参照ください。




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このページは、thikが2006年2月 8日 01:57に書いたブログ記事です。

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