リスクマネージメント

| コメント(1) | トラックバック(0)

リスク管理が重要といわれて久しい。考えられ得るリスクを列挙し、それらの頻度及び推定被害から優先順位を決めて対策するのが王道だ。勿論、想定できないリスク項目もあるが、かなりの部分はリスク対策を準備することが可能だ。

cnetが若干刺激的に取り上げている面もあるが、富士通の今回の発表では2つのリスクに対する策が不十分だったと思う。

一つは、記事中でも明示されているように、売価低減に対するリスク。IT業界では良くある話だ。こちらは深く言及しないが、

「毎年1%ずつ原価率を下げていけばいいと考えていたが、価格の下落が激しくて実現は容易ではない。乱暴(な目標)だった」
というが、2004年4月の計画立案時に比べて、当時の想定を超えるほど大幅な価格下落があったとは思えない。他に要因はあるのではないか。

もう一つは、リーダーシップ欠如のリスク。こちらは深刻である。変わらない富士通のエントリで書かれているように、責任の所在は社長にあるのに、営業やSEの責任にしている。

案件を精査しないまま受注してしまい、しかも「営業やSEが『顧客との交渉によって収支を改善できる』と言ったために様子を見ていた」(黒川氏)ために、結果として傷を広げる形となった。(cnetの記事から)

ITの塊である同社であれば、事業単位や顧客単位など様様な角度からの日々の事業を分析し、悪化しつつあるプロジェクトを自動でアラームするなどのことは朝飯前のはず。気付きながらも行動をしていないという、リーダーシップがリーダーに欠如しているリスク。企業にとっては最大級のリスクだ。

リーダーシップ欠如リスクはタチが悪い。なぜなら、リスクを認識すべきなのはリスクを取る人(=企業のトップ)なのだが、リーダーシップ欠如リスクを自分自身で認識することは永遠にありえない。このリスクを認識した瞬間にリスクは無くなるからだ。
リーダーシップ欠如リスクへの対策はただ一つ、リーダーを交代するしか無い、と思う

周りを巻き込んで自身のビジョンに共感してもらいたいリーダーたる者は、ポジティブシンキングが常に心がけながら、リーダーの権利と義務をしっかり認識する必要がある、と思った。


尚、CNETの記事と、富士通のwebに掲載されているリリースを見比べて見て欲しい。全くトーンが異なる。CNETの記事を読むと「この会社 and/or 社長ではダメだな」と思うし、富士通のリリースだと、「今年はダメだったけど、来年は何とかなるかも」と思える。
過去と現在の事実は一つだが、事実の捉え方がが全く異なるためだ。

cnetの記事を書いた永井美智子記者は、記者会見場のQ&Aで社長が何気なく発したであろう、「経営目標の達成は無理」という「ちょっとした一言」を冒頭に持ってくることにより、大変キャッチーな記事を生み出した。ジャーナリズムの面白さに感服すると同時にジャーナリズムの怖さも感じた。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://thik.jp/MT-5.2.8/mt-tb.cgi/528

コメント(1)

トラバありがとうございます。
非常に鋭いですね。オフィシャルなのを見てなかったのですが、やはり自社の事を悪くは書きませんよね。社長の息もかかるでしょうし。
あと社長のリーダーシップについて、交代しないとリスクがなくならないのは激しく同意です。
最近は西武みたいにトップの失態により企業イメージを傷付けるケースが相次いでいますし、多くの企業がトップの人選をくじ引きか何かで決めてるのではないかとすら思わされます。
コンプラが言われるようになって久しいのに変わらないのかと思うと、日本の風土自体になんらかのリスクや原因があるようにも思えます。

あれ?なんだか自分の言ってる事が分からなくなってきました。
長々と失礼しましたが、これにて。

携帯からなのでメアドは適当に打っちゃいました。すいません

コメントする

このブログ記事について

このページは、thikが2005年5月27日 00:34に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「みんなの力で良くする」です。

次のブログ記事は「なぜイヤなやつほど出世するのか ナルシシストがビジネスを支配する」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。