なぜイヤなやつほど出世するのか ナルシシストがビジネスを支配する

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著者は、人格を4つのタイプに分けている。ナルシシスト、エロティック、強迫型、マーケティングだ。

4つの人格の特徴 エロティック人格:「エロス」に由来し、他人を助け他人の力になりたいと考える。 社会事業、サービス産業などに多い。官僚・政治家・専門家・アナリストなどには少ない。 強迫型人格:行為の権威(父親的存在、厳格な両親、慣習など)が定めるルールにしたがって生きる。医師、エンジニア、財務専門家、科学者、研究者、職人に多い。

マーケティング的人格:順応性に富み、市場が欲しているものを感じ取ってそれに合わせて動く。大切なのは「正しい」か「間違っている」か、ではなく、「状況にあっている」かどうか、だ。不動産、広報、広告宣伝、イベント帰宅、ベンチャーキャピタル、資金調達、コンサルティング、演技、出版などで才能を発揮する。

ナルシシスト的人格:上記3つが、何らかの外部的な「正しいこと」をするということに基づいているが、ナルシシストは、何が正しいか、何に価値を認めるか、自分にとって何が意味を持つのかを、自分で決める。
生産的な(productive)ナルシシストの強さは、他人がどう考えようと自分を信じる強さであり、以下の特徴をもつ。

  • 世界を変革し意義を創出するビジョン
  • 精神の独立性とリスクを冒す勇気
  • 情熱
  • カリスマ性
  • 不屈の闘志
  • 貪欲な探究心
  • 脅威を察知する能力
  • ユーモア
但し、以下の弱さも持つ。
  • 他人の意見を聞かない、批判されると怒る
  • パラノイア
  • 激怒と罵倒
  • 競争意識過剰、コントロール過剰
  • 孤独
  • 誇張
  • 自己認識の欠如
  • 傲慢

戦略的知性
また、有能なリーダーシップに必要なのは、「EQ」ではなく、「戦略的知性」である。これは、

  • 先見
  • 体系的思考
  • ビジョンの構築
  • モチベーションの付与
  • パートナー作り
の要素からなる(実際、ジャック・ウェルチのEQは低い)。
リーダーを分析した結果、すると、「EQ」が低いのがわかった。また、「7つの習慣」の5番目として、「相手を理解して感情移入をすること」が必要と言っているが、生産的ナルシシストは、大多数が他人の気持ちに無頓着であり、自分の感情的爆発の他人に対する影響など考えていないのがわかった。ヘンリーフォードやスティーブジョブス、ジャックウェルチなどが例にあげられる。

ナルシシストのあしらい方
自分の専門分野で深い知識を持つこと、よきパートナーになること(但し、依存は禁物)、自尊心までささげないこと、イメージを傷つけないこと、ナルシシストの欠点と付き合うこと。


本書がビジョナリーカンパニー2(Good to Great)を強く意識している。あちらが「『偉大な』企業のリーダーは突出しておらず、謙虚で控えめだった」という結論を出しているのに対して、本書は、「ナルシシスト的人格のリーダーが、偉大なリーダーに多い」と結論している。

どうやら、成功する人間は謙虚で思いやりのある人物でなければならぬ、トップまで上り詰めた人間は前任であることの報いとして成功を得たのだ、という思い込みがあるように思えてならない。だが、これは歴史を意図的に無視する行為だ。現実には、控えめで内気なアメリカ大統領などというものは存在したことがないし、ビジネスの世界でも、政治の世界でも、成功するには相当な闘志や決意が必要なのだ。
(略)コリンズの指摘した「偉大な」CEOが輝きを放つのは、より多くの商品を売り、コストを削り、株価を上げることを目標とする旧来型の企業に限られる。さらに言うならば、ジャック・ウェルチのような押しの強いリーダーがコリンズの理想とするリーダーと比較して倫理観や決意や責任感において劣ると断ずる証拠は何もない。ビジネス評論家はウェルチのナルシシスティックな自己宣伝や特権意識に反感を抱くせいで、経営者としてのウェルチの優秀さを正しく評価していない

言い換えると、継続的なイノベーションを行う際には、Good to Greatのコリンズの主張のとおり「検挙で控えめ、EQが高く、7つの習慣を忠実に守る」リーダーが必要となり、破壊的な(不連続な)イノベーションを行う際には、ナルシシストの自己陶酔に近いほどの強力なビジョン(思い)が必要になる、ともいえる。

余談。
副題が「ナルシシストがビジネスを支配する」、原題が「The Productive Narcissist」。他の本と同じように、原題が内容をもっとも適切に表している。でも、タイトルを見て手に取ってしまうから、刺激的な邦題が必要なのでしょうね。
また、生まれてからずっと、「ナルシスト」だと思っていたが、英語のスペル(Narcissist)からすると、ナル『シ』シストが正しいようだ。但し、Googleの検索結果は、ナルシスト:約104,000件、ナルシシスト:約745件と、ナルシスト派のほうが多い。

なぜイヤなやつほど出世するのか
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このページは、thikが2005年5月30日 00:40に書いたブログ記事です。

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