ヒット商品の多くが「娯楽性」を備えている現在、エンタテインメントの発想を経営に取り入れるべき、と説く。
エンタテインメント発想の肝は「オーディション」「失敗の許容」「マルチユース」である。
オーディションモデル
提案されたコンテンツから、観客の反応に応じて取捨選択及び変更をし、コンテンツに磨きをかける、あるいは別のコンテンツを探す
失敗したら逃げるが勝ち
計画はしっかりとたてて考えを共有するが、プロセスは管理しない(現場に任せる)。
但し、撤退コストを最小にしていつでも逃げられるようにしておく。
失敗を責めない。気付く点が多い、大きな失敗を表彰する(ホンダ)。
マルチユース
ヒットしたコンテンツの使いまわし。
マルチユースの為には、各テリトリに強いプロが協力する必要がある。人脈が重要。そのために、人事異動を頻繁に、かつ大きく行う
成功は次のイノベーション(現状へのアンチテーゼである場合が多い)を遠ざける。理由は3つ。(注:イノベーションのジレンマ、と同様の主張ですね)
1.完成の法則がもたらす鈍感さ
2.大組織に浸透した「当時の成功パラダイム」
3.「資産の負債化」
まとめ:
イノベーションを生むには、「いかがわしいもの」に賭けるべき。そのためには、以下をトップが行う。
1.否定グループを作る。「自社を否定する」というミッションを与えて、トップがプロセスまで立ち入らない。
2.グループ編成にはオーディションモデルを取り入れ、否定グループはできるだけ複数作る。
3.必要にして十分な経営資源を与える。特に、人脈の提供が重要。
4.十分なインセンティブを与える。成功すれば十分なインセンティブ、中途半端な成功または失敗は、内容によりインセンティブを多大に提供する。「失敗が歓迎される雰囲気」が醸し出されれば、みんながチャレンジを始める。
5.素早いスクラップ・アンド・ビルド。うまくいかないときはトップの意思で撤退する。撤退は日本企業がもっとも不得意とするところであり、許容される失敗であることを示す為にトップが明確に撤退させる。
最後に、著者の主張を引用する。
否定グループを育てるのは、容易ではない。(略)だが、もし自分のアンチテーゼを取り込む度量がトップにあり、生意気でいかがわしい反対分子を育てる力量があれば、企業は万物流転の法則から逃れられるかもしれない。長い生命を保つ為には、そんな小さな可能性に賭けていくしかないのである。
エピローグ
日本のベンチャー育成は大企業の役割である。豊富な人材、人脈、基礎技術。無いのはアイデアだけ。企業はプロデューサ。タレントは外部から集める。
アンチテーゼに賭ける。携帯・インターネットのアンチテーゼを探すべきでは。
イノベーションの解の後半の「創発的」なプロセスと同様なものを目指していると思うが、「現状を否定する」というところから入るのが新しい。「ヒットが飽きられた後は、その反動で逆の特性をもつものが流行る」というのは納得。もちろん、生産財では消費財のヒットほど「振れ幅」は大きくないとは思うが、初期アイデアを出す時にはまったく逆から考えるのも面白いだろう。そのような「まったく突飛な」アイデアを、従来のヒット商品の考えに染まった慣性モーメントが大きい経営陣に投げると、ちょうどいい按配になるのかもしれない。
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